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清掃夫は見た-?だけど、愛しき人々③

外資系高級ホテル編

 さて、その後の趙さんの話に戻そう。その日、私と趙さんは45階のロビーラウンジの清掃をしていたのだが、今日に限って趙さん黙々とテーブル吹きの仕事に励んでいた。
 ロビーラウンジとその隣のバーは、平日は深夜1時で閉店、お客さまが完全に出はからった後から清掃がはじまるのだが、その日は金曜日、まだ帰らずに疎(まば)らにお客さが残っていたが、私は迷惑がかからないようにいつもより静かに仕事をしていた。まずは跪(ひざまつ)いてテーブルの脚を丹念拭きながら<仕掛け棒>がないかを探していた。ふっと立ち上がり趙さんの方を見ると、彼は誰かを発見したのか、じっとラウンジのバックヤードの入り口の方を見詰めていた。
 突然、趙さん、そちらに駆け出していった。どうしたのだろうと、そちらの方角に目を凝らすと三上が入り口の扉の拭き掃除をしていた。二人は何か言い合ったかと思うと、趙さんが逃げるようにラウンジ横のレストランの方に駆けだ出していった。それを三上が小さな細身の身体で追いかける。趙さんの身体が馬鹿デカいので、まさにネズミが猫を追いかけているようだっが、私はヤバイと思い、すぐに三上を追いかけたが追いつかなかった。二人はホテル内を捕り物帖さながら追っかけっこした後、三上が従業員食堂でやっと趙さんを捕まえて、形相すさまじく鬼のように趙さんを問い詰めた。
 趙さん、案外と正論に弱く、言い返すことが出来ず、三上の首を捕まえて、
 「オマエ、キモチワルイヨ」と皆が思っているが口に出さないことをとうとう口走ってしまった。さすがの小さな三上も堪えきれず、その趙さんの胸を突き飛ばした。趙さんテーブルに倒れ込んだと思うと、三上は馬乗りになり趙さんの首を掴むと、趙さん「オーマイゴット」と叫びながら顔を手で覆った。
 食堂は4、5人の従業員がいたが、騒然となり、マズイのはそこに偶然(たまたま)、ホテルのマネージャーが居合わせていた。マネージャーすぐに班長・伊藤を呼び、その場は終結したが、ただの趙さんの思い込みから、とうとう最終局面に行きついてしまうという何とも言いようもない事件だった。
 蛇足だが、驚いたのは三上、案外喧嘩が強いということだった。
 結果、趙さんは馘を言い渡され、三上は配所さながら別の現場に移された。
 班長・伊藤と会社側は、マネージャーにお叱りをうけ、今度このようなことがあったら、契約を打ち切り、別の業者に変わってもらうという厳重警告をうけて事件は落ち着いた。
 翌日、従業員通用口からホテルに入ろうとすると、紙袋を両手に抱えホテルを出ようとする趙さんにばったり会った。
 「宮田サン、ワタシクビネ」と彼は顔に悲しそうな笑みを浮かべて言った。
 私に驚きはなかった。
 「ニホンジン、オカシイヨ」と今度は苦笑した。
 十分、趙さんもオカシイヨと皮肉を言おうとしたが、心に止めた。
 「ニホンジンダイジナコトアイマイニシテ、ダイジジャナイコトニコマカイネ」
 会社側から、相当お叱りを受けたが、思うところをぶちまけてみたのだろうが相手にされることはなかったのだろう。日本人批判をはじめたかと思うと、
 突然「ゼッタイ、アイツヤッタネ、ワタシミタノヨ」
 と今度はギョッとするようなことを言って、何の反省もなく、まだ「ゼッタイ」と言い張って大きな身体を揺らして
 「ソレジャネ、宮田サン」と言って去っていった。
 じっと去っていく趙さんの後ろ姿を眺めながら、「元気でね」と大きな声で呼び掛けた。趙さん振り向いて紙袋を持った手を上げた。「ワタシミタノヨ」という言葉が変に瘤(しこり)として心に残るのであった。そして、この三上、さきほどもどうにも気持ち悪い男だったと言ったが、最後のどんでん返しで、それ以上に凄まじい男だったことは、私もこの時は分からなかったのであった。
 その日の朝礼では、前日の事件説明があり、趙さんの馘と三上の現場移動が知らされた。
誰もが少し驚いた素振りを見せたが、一番嫌われていた二人が居なくなり皆(メンバー)は内心ホットしたと同時に喜んでいたのではないだろうか。
 喜んでいたのは、班長の伊藤で、前日からこの事件に翻弄され一睡もしてないらしく顔は疲れで浮腫(むく)んでいたが、趙という問題児がいなくなり一番助かったのは彼なのではないだろうか。
 ただ趙さんも言っていたが、この伊藤、気持ちは分かるが中国人に対しての対応が冷酷すぎるところがあり、特にその後も中国人とモンゴル人との対し方に大きな隔たりをもうけ、公平さに欠けることは否めなかった。

 深夜1時にもなると、さすがにスパ・フィトネスジムのコーナーも人はいなくなり、ポツリポツリとジムを利用する外国のお客様が寝る前にひと汗と現れるぐらいになる。
 私たちは二人で、朝5時30分まで、廊下、ロッカールーム、マッサージ室10室、サウナルーム、プール等のバキューム(掃除機がけ)と拭き掃除に専念する。
さすがに超高級ホテル、非の打ちどころがないほどに清潔なのだが、そこは毎日のルーティンの繰り返しが、この清潔さを保っているわけで、私たちも髪毛一本落ちてないか、鏡に指紋がないか、どこかにホテル側が仕掛けを施してないか(前述)等、目を凝らして隅々まで見て廻る。
 そんなある日のこと、さてサウナル-ムを清掃しようかなとロッカールームに入ると、何やら人の気配がする。お客様が寝る前にお風呂にくることはよくあることなので、
それでは、後回しにしようとロッカー室を出ようとした瞬間。何やら浴室の方から怒鳴り合うような大声が聞こえてくる。何かあったのかなと恐る恐るサウナルームへ足を向けると、
「おー、叩き殺してやろうか」
「上等じゃないか」
「ほら殴ってみろよ、ほらほら、お前から殴ってみろよ」
「なめるなよ」
ヤクザの喧嘩まがいの怒号が飛び交っているので、これはイカンと思い、スパ担当マネージャーに電話を入れようとしたが、生憎、電話は相棒のモンゴル人のバルトが持っている。しょうがないと思い、すかさず奥へと向かうと、水風呂の前で、裸で若い男と中年の男二人が顔を突き合わせて、今にも一触即発、殴り合いがはじまるかの瞬間だった。
 「お客様、どうしたんですか」と私はすぐさま止めに入った。
一瞬、二人同時に私の方に顔を向けると、中年のゴルフ焼けか、黒い精悍な顔つきの男が
 「いや、こいつが、汗を流さないで水風呂に入ったんで注意したらいきなり怒りだしてね」と中年男は冷静に言った。
 「いや、俺は汗流して入ったのに、こいつが見てなかっただけだよ」と若い男は反論する。
 「お前、出た瞬間にそのまま飛び込んだだろ、俺はサウナ室の窓から見てたんだよ」
 「嘘言うな、俺はシャワーを浴びてから水風呂に入ったの」と口を尖らせ、中年男に突っ掛かるように言った。
 「いや、すぐに飛び込んだよ、お前は」
 このまま5分間ぐらいだろうか、どちらかが手を出しそうな危険をはらみながら、終わりのない口論が続くのをじっと私は聞いていた。
 確かに、サウナ室からすぐに飛び込んだのを小窓から見ていたのもきっと正しいのだろう。またシャワーを浴びたのも正しいかもしれない。小窓からシャワーのある位置は死角になっており、小窓からではシャワーを浴びたかどうかは確認できないので、若い男が嘘ついているのか、ついていないかだけが問題になるため決着のつけようがない。こういう場合どういう落とし処を見つけたらいいのか、大岡裁きのように三方両損で上手い決着の方法はないものかと思案したが、
 「お客様、言い争っていてもしょうがないので、ここは落ち着いてもらって、汗を拭わないで、水風呂に入っていけないというのはお客様両方とも認識していらっしゃるのですから、今後、必ず汗を拭って入ることを徹底してもらうということで、お互いここは引いていただけたらと思うのですが・・・」
 私は何だか分かるようで分からない理屈を並べ、何とかこの小競り合いに終止符を打とうと必死に言いくるめた。
 しかし、夜中に高層の超高級ホテルの天上階のスパで三人が(二人は〇〇ポまる出しで)、立ちながら口論をしている姿を想像してみてください。また口論の種が、サウナの後に汗を流して水風呂に入ったか入らなかったかという、ほんまに小さなことで20分ほどやり合うと言うのも滑稽を通り過ぎて喜劇というほかにない。
 しかし、この世の中、揉め事の原因はすべてこんな小さな出来事から起こるもので、特にこういうホテルの揉め事は、ほんとうに小さなことに起因していることをこのバイト経験で身にしみて感じたのである。二人は私の何だか訳のわからない理屈を聞いて、納得したのか呆れてしまったのか分からないが急に黙ってしまい。きっとお互い疲れたのだろう。
若い男が
 「今度はただじゃおかないからな」と捨てゼリフを吐いてその場を後にした。
 「ただじゃおかないってどうするんだよ」と中年男はドスの効いた低い声で言った。
 中年男は冷静になるとやはり大人である。申し訳ない、とこちらに謝罪して流し場の方へ向かっていった。私は仕事を続けようとサウナ室を出たが、次に何をしたらいいのか、所在投げに、頭を冷やそうとプールサイドをフラフラと歩き廻った。外を眺めると、眠らない東京の夜景がやけに寂しげに輝いていた。歩きながらこの中年男、どこかで見覚えのある顔だなと記憶を辿ると、最近はあまりテレビや映画に顔を出さないが、以前はVシネに登場していた俳優のMではないかと、少し以前よりは老けたが(当然である)、さすがに俳優、まだオーラはあった。ヤクザまがいの言葉も真に迫っていたのは、そこは俳優である。そして〇〇ポも大きかったのは、さすがである(何を感心しているのか)。あの若さでは彼のことは分からないだろうが、もし分かっていたらあのような口論になったかどうか。
 そして、私はこの事件のあらましを、担当マネージャーに告げることを控えて、無かったこにして処理をした。もし彼に話せば、何故自分にすぐ連絡をしなかったと小言がかえってきて、私の大岡裁きを褒めてくれるどころか、逆に私の行動に難癖をつけてくるのがオチであったからである。

清掃夫は見た-?だけど、愛しき人々②

外資系高級ホテル編

第1章 ここぞ、ほんとうのグローバル

 始業のタイムカードを押そうと、清掃控え室のドアを開けると同僚の趙さんの甲高い声が聞こえてきた。
 「ワタシ、チャントヤッタヨ、ゼッタイニ、ゼッタイニ……」と何度も「ゼッタイニ」を繰り返している。
 班長の伊藤は苦り切った顔つきで、
 「でもね、趙さん、四つも棒が出てきているんだよ」と彼は仕掛棒を趙さんの前に突き出している。
 趙さん、少しマズイなという顔つきをしながらも口をとがらせて、
 「ヤッタヨ、ソレ、オカシイヨ」とまた反論している。
 「でも、これは事実だから」と困惑した顔をして伊藤は言う。
 「ゼッタイ、ダレカ…」と趙さん、さすがに、誰か自分を陥れようとしてやったんだよとは言えず、言葉を切った。
 「まあ、これから気をつけてよ、頼んだよ」と伊藤は皮肉っぽい顔つきで言った。伊藤もうこれ以上言っても、しゃーないと諦めて趙さんから目を逸らした。
 趙さん、自分の仕出かした過ちなのに、まだ不満気に「ゼッタイ」「ゼッタイ」と小さく呟いて控室出ていった。
 仕掛け棒とは、私たち清掃員にとっては嫌味な棒で、雇主のホテル側 が私たちがちゃんと仕事をしているかを試す小さなガラスの棒で、ところどころ清掃範囲にその棒をランダムに置いて(例えばソファー下、裏、テーブルの上、部屋の隅等)、落ち度ないかを管理するための棒なのである。手を抜かず仕事をしていればその棒がなくなっている。それがそのままあるということはいい加減な仕事をしていると判断されるわけである。清掃員が一番困るのは、真剣にやっていても見落としてしまうことはあるし、手を抜いても見落とさず済んでしまうことがあるもので、その辺はホテル側、あずかりしらないということなのである。逆に言えば棒のあるなしで仕事の<質>は何も問わないと、私たちにとってどんなに一生懸命やっても棒一つ置き忘れれば、いい加減な仕事ぶりだと判断されてしまうのが何とも痛いのである。
 まあ、4本も置き忘れるというのは、さすが中国人(失礼)、滅多にないので班長伊藤の苦渋も分かるのである。
 この趙さんロッカー室でも。まだ今度は「チガウヨ、チガウヨ」と何が違うのか悔しそうに呟いていたかと思うと、
「宮田サン ワタシヤラレタネ」と口を尖らせて言った。
「何をやられたの」と答えると
「三上ガ、ハンニンネ」と言った。
「何の犯人なの」
「三上ガ、オワッタトキ、ボウオイタンダヨ」と言った
 私は冗談で言っているのかと思ったが、趙さん真剣なのである。
「趙さん、そんなことあるわけないだろ」とさすがに怒って、少し声を張り上げた。
「ゼッタイネ、ゼッタイネ」また彼は「ゼッタイ」を繰り返した。
「趙さん、考えてみなよ三上がそんなことして、何の得になるの」
「イヤ、三上ダヨ、コレセイカイヨ、宮田サン」趙さんはあたかも推理小説の犯人が分かったので人に伝えたくてウズウズしているような顔付きでいった。呆れかえって「頼むから三上にそんなこと言っちゃダメだよ」という言葉しか出なかった。
 ところが、この趙さん、もうここで読者の方は展開がお分かりだろう。そう、彼は三上に直接問いただしてしまったから、さあ大変、結末は後ほど話しますがその前に、ここでは、私がどういう経緯でこのホテルで清掃業という世界に入ったか、またどのような仕事をし、どんな同僚がいるかを簡単に説明していた方が、後々の話が分かりやすので少し説明させていただく。

 私は、17年間、食品宣伝を専門とする広告会社を経営し、健康食品ブームに乗り順調に売り上げを伸ばし、この世の春を満喫している時もあったのだが、ある事件に巻き込まれ会社をたたまなければならなくなったのが、まずはこの清掃業に入るきっかけだった。
 いまさら、社長だった人間が、年齢(40代後半)もあるだろうが普通のサラリーマンに戻ることは簡単には出来ないだろし成る気もなかった。出来るならばとりあえずは簡単なアルバイトで日々の暮らしをやり過ごしながら再度業界復帰をなどと考えていた。
 ところが、世の中手っ取り早い仕事というと、単純な肉体労働しかないのが現実であり、物流の配送、建築労働、守衛さん、そして清掃業ぐらいが主たるもの。そしてどれもが東京では時間給1,000~1,300円が相場。だが人間切羽詰まると何でも出来るもので、そのほとんどを体験し一番長続きしたのが清掃の仕事だった。配送、建築労働はさすがに50を越えた歳になるとシンドイ中、清掃ぐらいの軽作業が年齢的にも身体に一番フィットしたのである。問題は心の問題である。仕事自体は言ってしまえば中学生でも出来る単純なもの。慣れれば何物でもない。だがどうしてこんなに見をやつしてしまったという気持ちが身体の動きを止めてしまうのである。自分は運搬の仕事するために、ゴミ集めをするために、この世に生まれてきたのか、大学まで出たのか、を考えると荒(すさ)んだ気持ちになるのは否めないのである。その気持ちを「これで終わりではない、ただのアルバイトである」という慰めの言葉(この言葉が己に潰しがきくかきかないかの瀬戸際の言葉なのである)でやり過ごし、日々何とかゴマカシゴマカシ暮らしていたというのがほんとうのところだろう。
 そんな現実の中の稼(しのぎ)のひとつが外資系超高級ホテルの清掃バイトであり、初めて清掃初体験の仕事であった。
 「外資系ホテルでのパブリック(公共施設)清掃員急募」というコピーに、21時から早朝6時まで、1時間休憩、実働8時間。時給1,300円。週3日以上、シフト制。交通費規定支給、制服貸与という募集内容だった。
 深夜仕事に引っかかりがあったが、この不景気だとめったにない時給に飛びついてしまったのがきっかけだった。
 五反田のメンテナンス会社で面接を受け、翌日には採用が決まり、その日にホテルへ行き、ホテル側のマネージャーに挨拶。三日後には初出勤だった。
 このホテル最近よくある複合ビルの一角にあり、ビルの地下1、2階、地上1、2階と45階から50階がホテルの占有階だった。
 地下2階の清掃控室で班長の伊藤に挨拶し、細かな仕事内容の説明を受けてから、45階まであがると、バックヤードの廊下にこれから同僚になる清掃員たちが屯(たむろ)していた。さすが外資系ホテル、ワールドワイド(さまざま)な顔付きの方々がいた。
 21時に朝礼がはじまり、伊藤が皆に私を紹介し、その日の担当場所とペアを組む名前(担当場所は2人でペアを組むのが原則)の報告があり、
「本日も一日、頑張りましょう」という伊藤の掛け声のもと、それぞれが担当場所に散らばっていった。
 はじめは研修のため班長の伊藤に付いて、それぞれのホテル内の施設を案内された。さすがに超高級ホテル、すべてにおいて重厚で高級感を漂わせている。特に45階ロビー前のラウンジは、天井が高く周囲が大きな窓に覆われ、東京の東西南北四方(すべて)が見渡せて、そこ自体が展望台になっている。丘の上の高層タワービルのため東京タワーが低く見えるということだけでも、いかにここの景色が絶景かの説明になるのではないだろうか。
 ちなみに、このラウンジのコーヒー代は1,200円(これにサービス料+税金を加えると1,500円)。しかしコーヒーが付いて、これだけの展望台に上れると思えば安いのかもしれない。
 ただ蛇足だが、毎日のようにここから外を眺めていると慣れというものは恐ろしいもので何の感動もなくなり、景色など見向きもしなくなるのである。私はこの体験で高いお金を出して高層マンションなどに住むものでないなということの認識できたのは良かったと思う(買うお金もないが)。
 また何よりも圧倒されたのがスパ施設のプール。さすがに25メートルプールとまではいかないが、縦15メートル横10メートルの大きさの室内プールが46階という高層階にある。ひょっとすると日本で一番高い位置にあるプールなのではないだろうか、それが三方ガラス張りの窓で覆われているのであるから何かを言わんかである。
ひと通り、担当施設の案内を終わり、いくつか注意事項を聞き、バキューム(掃除機)の使い方、ダスタ―(雑巾)の拭き方、フラワー(ホコリ取り)の際の注意、お客様への対応の仕方等を教わり研修は無事終わった。後に、他の清掃バイト(デパート、高級マンション、大学、オフィス)を経験して分かったのだが、清掃業で一番キツイのが高級マンション、その次がホテル清掃、それも高級ホテルはそれに輪をかけて厳しいのであった(当たり前だが宿泊料が高いのであるから清掃もより一層のクオリティーを要求される)。それは考えればすぐ分かることだが、ホテルは清潔なのが当たり前なのである。お客様に快適に宿泊してもらうために何よりも必要なものは清潔さである。故に、ホテル側はクリーニングには万全を期すのであり、極端かもしれないが綺麗か汚いかはホテルの生命線でもあるのだから当然である。そのような環境の中、清掃業者にもより厳しいワーキングを要求するのも仕方のないことなのかもしれない。 
 私は清掃業が初めてだったので、こんなものなのかと思うだけであったが、高級ホテルの髪の毛一本、指紋一つ、壁のほんの少しのホコリさえ許されない鉄壁な姿勢は当然のごとく報酬に見合わないかなりの負担を清掃員にしいているのであった。パブリック(ホテル内公共施設)でこれなのだから、客室清掃はそれ以上なのだろうなとその当時思ったものである(客室清掃をしている女性から客室清掃のさまざまな苦労を聞いた―後述)。

 現在(いま)、他の清掃を憶えてしまった私が、ホテルの清掃業をやるかと言えば、時給が少しばかり高いだけでは決してやらないだろう、特に高級ホテルと高級マンションは(今の倍の時給なら考えなくもないが)……。仕事はきつかろうが、楽だろうがアルバイトの時給は変わらないのである。それはまさに、働く者の能力、スキルなどはどうでもよい仕事であるという表れではないだろうか。ただ、始めに厳しい経験をしておかげで、その後の他の清掃が非常に楽であったのは、逆に言えばラッキーだったかもしれない。

 私の初仕事のペアは前述の中国の趙さんで、担当場所の前半は2階のホール前コリドール(廊下)で、休憩をはさみ、2時から45階のレストランフロワーにある寿司、天ぷら、鉄板焼き店の清掃だった。ペアの趙さん、人懐こいのはよいのだが、常に、私の側(そば)に近付いてきて喋りまくる。その内容のほとんどが、ここの清掃のやり方は間違っているということと、後は自分のことが主だった。彼は、10年前に中国の浙江省から来日。中華料理屋のコックとして働きながらもいくつかの店を転々しながらも、4年前に池袋に店を持ち繁盛していたが従業員に1年間に渡り使い込みをされていて、バカバカしくなって1年前に店を閉じ、奥さんはマッサージ師で、小学校2年生の娘が一人いること。私は趙さんと一緒に仕事をして、2日で趙さんの人となりを知ることとなる。
 この趙さん、自分の清掃スキルに絶対に自信があるらしく、常にこうあるべきだと、口では説明するのであるが、何せほとんど仕事らしいことはしないので、私には彼の技術の凄さは分からなかったというのが正直なところだった。ただ、中国社会の様々なことを教わったので、趙さんに出会えてよかったと思う。
「宮田さん、中国人ノ中華料理屋、ミンナ華僑ガシキッテイテ、開店スルトキハ、ウデノイイコックツレテキテ、キャクヲアツメルノヨ、ソイツハ開店サンカゲツデヤメ、マタ開店スルミセニイクノ、ダカラサンカゲツスルト、ソノミセマズクナルノヨ」
「中国セイフカラ認定サレテイルトカ、免許ガハッテアルオミセアルデショ。コックトカマッサージノヒト、アノ免許、ホトンドウソ、ジブンデツクッテイルノヨ」
 「中国人ファミリーガダイジ、タニンノコトナドナニモカンガエテナイネ」
 趙さんの言っていた一部を紹介したが、確かに、私の自宅の近くの華僑系中華料理屋、開店当初は、大変旨かったが、数か月後、味が確実に落ちていたが、彼の言うことはひょっとするとほんとうなのかもしれない。
 また、中国政府の認定免許証も中国人なら平気でそんなことはやりそうな気はするが、果たしてどうなのだろうか。
とにかく、この趙さん、悪口と否定的なこと、自分は如何に優れているかしか言わない人で、「アレ、ダメヨ」「ワカッテナイネ」「オ―マイゴット」が口癖の人だった。

 ここで、その当時一緒に働いている同僚たちを紹介しておこう。各国別には、日本人が10人、モンゴル人が4人、中国人が1人、バングラデッシュが1人という構成(あつまり)だった。外資系のサービス業は人員の3,4割は外国人を雇わなければいけないという義務(きまり)があるらしいと聞いたが確かなのかは定かではない。
 日本人の従業員は、NHKの受信料の徴収係とWワークをしている50代後半の班長の伊藤、消防士を55歳で辞め年金が出る60歳になると奥さんに三行半を受けてしまった63歳の高木、55歳で会社をリストラで首になりその退職金で鍼灸学校に通っている56歳の繁田、唐津で7年間陶芸家だったが、東京に戻ってきた40歳の荻野、個人経営で保険会社の代行の仕事をしていたがある時事務所に泥棒が入り、首を刺されて死の淵をさ迷ったという特殊体験を持つ60歳の松永、暴力沙汰で高校中退し職を転々としいる茨城訛りの35歳の大橋、会社で人事の仕事をしていたという資格マニヤの馬鹿真面目な田中、それから神経質、杓子定規でいかにも腹に何か一物をもっていそうで余りお近づきをしたくない40歳の三上、思想活動でもしていたのか変に左翼的で理屈っぽい38歳の岡島、と良くもまあこれだけ訳ありや脛に傷のありそうな人員が揃ったものである(一番脛に傷のあるのは私かもしれないが)。
 この輩たちが、これまた外国人労働者という自分たちとは習慣の違う人間と一緒に仕事をしていくのだから問題が起こらないわけがないのである。
 外国人と一緒に働くなどというのは私も初めてであった。実は国際的な世の中になったと言っても、ほんとうに国際的になっているのはこの外資系ホテルの清掃業やサービス、観光業のような世界で、ほとんどの日本の労働者は外国人と一緒に働くなどという機会は少ないのではないかと思う。日本の場合、日本語だけでマーケットが成立していける社会なので、そもそも日本語が出来る外国人以外は言葉の障壁があって、入り込む余地は少ないである。実際に仕事で外国人と接触している日本人など少ないのは当たり前なのである(商社等外国で飛び回ってるいる職種の人は別だろうが)。国際化、国際化と言っても何の国際化なのかナンジャラホイなのである。故に日本人は英語が出来ないなどと言われるが、出来なくても生きていけるのだし、必要性が少ないのだから身に着かないのは当たり前なのである。ただ、今後、これからの日本人は、外国に出て働かなければならなくなる時が来るかもしれない。  

 地下2階の従業員食堂は、24時の休憩時間になると、それぞれ従業員がお茶を飲んだり、空(す)き腹を軽くみたしたり、仮眠をとりに、と集まってくる。
ある、時壁にある大画面テレビを観ていると、深夜のバラエティー番組ではホモ(男色)の話題で番組が進行されていた。それを観たバングラデッシュのウラ君が
「日本人オカシイヨ、バングラデシュにコンナノイナイヨ」と小さな声で呟いた。
 よせばいいのにウラ、何度も何度も
「オカシイヨ、オカシイヨ、ニホンジン」と真剣な顔突つきで言い続けた。
 私たちは苦笑いしていたのだが、突然、陶芸家の荻野が
「お前のとこには、ほんとうにホモはいないんだな」とドスの効いた低い声で言った。
「ソンナノイルワケナイヨ」とまた今度はカナ切り声をあげた。
 荻野はとうとう切れて
「お前なホモセクシャルがいないなんて、嘘ついてるんじゃねー。アッラーの神がホモを禁止しても、自然にホモはあるんだよ、このボケ」と大きな声をあげた。
 それを聞いたウラは、
「そんなことない、バングラデシュはホモいないよ」とまた突っかかる。
 荻野は呆れ顔で、
「いたらどうするんだよ。お前、イスラム教改宗するか」
「日本人おかしいよ」
「おかしくないよ。お前がおかしいんだよ」と荻野は皆に同意をもとめるように言った。それを周囲で聞いていた者は、当たり前だが、我関せずの態度で苦笑いしているしかなかったのである。
 この問題、どちらが正しいとか正しくないとかいう問題ではないのである。スンニ派のイスラム教徒であるウラと日本人の荻野では、この後いくら言い合っても平行線であろう。荻野がバングラデシュのホモ(男色)を彼の前に連れてきても、彼は絶対に認めないだろ、というかその男色はもうイスラム教徒ではないのである。民族融和と言っても最後の最後では、宗教、教育、習慣、政治制度、文化など全てにおいて差異(ちがい)があるのだから、お互いが相手の中に入り融和するなどと言うのはそもそも困難なのである。等閑(なおざり)と見せかけの融和はできるだろうというのは皆心の中では理解しているのである。
 この二人、次には豚肉を食べる、食べないでやり合った後、もうほとんど会話することもなく、一人の日本人とバングラデシュ人の友好関係は終わってしまったのである(はじめから友好などはなかったが……)。
(つづく)

清掃夫は見た-?だけど、愛しき人々①

外資系高級ホテル編

序章?(不思議)?(不思議)で始まった

 宴会場、いやここは外資系高級ホテル、地方の温泉旅館ではないのだからグランド〇〇〇〇〇ホールという堂々した横文字である。しかし、その横文字の〇〇〇〇〇は誰一人として憶えている人も、憶えようとする人もいない。
 そのホール、今宵は、どこぞの投資会社の新年会がたけなわで、いつもより遅くまで騒がしい声がホールの外へまで響いた。
 私はそれを尻目に何関せず、清掃道具(フラワー・壁のホコリを取る毛の付いた吸着道具)を使いながら、まだ不慣れながらホールのエントランスの壁のホコリを一生懸命拭っていた。エントランスは細長い廊下がエレベーターに繋がっており、2階にあるホールからホテルを出る際には、必ずこの廊下を渡らなければならない構造(しくみ)になっていた。
 突然、宴会場の扉が開くと、20代後半ぐらいの女性2人が顔に笑みを浮かべ出てくると、こちらに早足で向かってくる。私はお客様の道を塞いではいけないと思い、身体を壁に寄せ道を作った。
彼女たちは近づいてきて、一人が
「出口はこちらでいいんですよね」と聞く。
すかさず
「真っすぐ行って、エレベーターで1階に降りたら出口です」と丁重に応えて、彼女たちを見送った。彼女たちは誰かに追われているのかのように逃げるように去っていった。
 さて、仕事に戻ろうとまた壁に向かった瞬間、
「おい、お前逃がしたな」と突然の声。私に言っているのだろうかと振り向くと痩せぎすの背の高い、そうトカゲのような男が口を尖らせて前に立っていた。
「お前、逃がしただろう」と今度は、私に言っているのだと確信したが、何のことか理解に苦しみ言葉を発することが出来なかった。
 咄嗟に、
「お客様、どういうことでしょうか」と慇懃に尋ねると
「何で、止めなかったんだよ」と今にも私の胸倉に掴みかかるではないかという形相で睨みつける。
「どなたをですか」
「……」
 一瞬、さっきの女性たちのことかと一応は納得したが、さて何のことやらと頭に?(ハテナマーク)が点滅し立ち尽くしていた。
「お前分かっているだろう。何で逃がしたんだよ」
「逃がしたと言われても、お客様・・・」と接客業などしたことのないただの新人の清掃夫がこういう時にどう応対して良いか分からず、ただ言葉少なく、相手の出方を伺っていた。
「だからお前はダメなんだよ」
「……」(あれ、何かがオカシイとまた?が今度は多く点滅した。だからお前って、あなたとは今始めてお会いしたのですよ。どこかで一緒に仕事でもしたか)
「なぜ、止めなかったんだよ。止めるべきだろう」と今度は拳を握りしめ殴りかかりそうな勢いで、私は怖くなったが、とりあへず勇気を出し、言うことは言おうと、
「お客様、私は、お客様と先程お帰りなった女性のお客様とがどういう関係なのかもしれませんし、お客様から前もって、こういう女性のお客様が来たら、待たせておくようになどご依頼されておりません。ですので、まして女性のお客様をここで止めておく権限もございませんし、お客様から出口はどこかと聞かれましたので、お応えしたまでで…」
(俺のどこに落ち度があるだよ、あるなら言ってみろ、このボケ)と内心はここまで吐き出してやろうかと思いながらも我慢して失礼のないように抑え、整然と言った。とするとこの男言っていることが分からないのか、
「だからダメなんだよ」と首を振った。
 と言うことは、私はあなたの行動が上手くいくようにあらかじ予測していなければダメなのか、そんなバカことがあるかと、少しカッっとなりながらも、
「お客様、何がダメなのか分からなのですが」と冷静に声を発したが、少しばかり高飛車に出た。
 するとこのトカゲ男は身体をぶるぶる震わし、「こっちへ来いと」私の腕を掴んだ。私はここで、何か言ってもしゃーないと、清掃道具をここに置きっぱなしにしてはマズイと思いながらも(この時はまだ冷静さを失わずにいた)成すがまま従ったのである。
 この男は私をエレベーター前まで連れていくと、「俺が教えてやるから、ついてこい」と言って、まず「エレベーターのボタンを押すだろ、ホラやってみろ」と私に指示を出した。
 その時点で、(ひょっとする)と考えて、この筋書きだと理不尽さも解消されるのではないかと、このトカゲ男、新人アルバイトの研修のためにきた私が雇われている会社の上司で、私の働きぶりを抜き打ちで観察、テストをしに来たのだと。そうそうなのだと納得すると筋が通りそうだと、今までの?(ふしぎ)と理不尽さも解消されるのであった。
 上司かもしれないトカゲ男はエレベーターに乗り私を誘う。私に階上のフロントとロビーフロアーのボタンを押させると、今度は「お前な、ここへ行く意味分かっている」と口を荒げた。
「いいえ」と私が小さな声で返答すると、また「だからダメなんだよ」と吐き捨てるように言った。ロビー階に着くと、無言のまま、ただウロチョロし(ひょっとするとロビーにかの女性たちがまだいるのかと探っているのか)、見付からなかったのか悔しそうな表情をして私に近寄り、また「だからお前はダメなんだよ」と、さも自分の部下のように呟き、「ほら行くぞ」といって、顔でエレベーターのボタンを押すように指示をする。
「どこへ行くのですか」と尋ねると、「1階に決まっているだろう」と言ったかと思うと、「だからお前はダメなだよ」と繰り返した。
 私は、もうそろそろ本性を現し、まさにドッキリカメラのように、「研修終了。良し合格」を(こういう理不尽な対応をされた時には怒らず我慢するのが接客の基本なのだと…。接客業でなく、清掃業なんです。)、いつ言いだすのかと期待して従っていた。
 しかし、そう考えるとあの女性たちもグルか?と。しかし、研修でそこまでやるかと思いながらもその上司かもしれないトカゲ男についていった。
 1階のフロアーに着くと、トカゲ男、トイレはどこかと聞き、場所を指示すると、「ついてこい」とスタスタと先へゆく。私は(ズーっと付いていってるだろ、このボケ)と思いながらも、きっとトイレの中で「ドッキリカメラの真相」が暴かれるのだと何とも泰平楽な憶測をしながらついていった。
 トイレの中に入ると、男は右手の奥の大便用のフロアーにいくので、私は足を止め、流しの前で待つことにした。男はさっぱりした顔でこちらに向かって私の顔を覗きこむ。
 そして、不思議そうな顔をしてこちらを見た。
 私はこれから真相を伝えるのだなと期待して、彼の動作を眺めていた。
すると「お前、さっきから何でついてくるの」とバカにしたような顔して私をあしらった。
 「お客様が、ついてこいと」と私は半場呆れながらジワジワと頭に血がのぼってきた。
 「俺そんなこと言った、バカ、ほんとうにバカだなお前は、それよりお前誰なの」と今度はバカを繰り返す。
 「ここのホテルの清掃を担当しているものですが」と言いながら、今にもキレそうだった(次に何か言ったら胸倉掴んで、ハタキ倒してやろうと)
 「掃除の人間が何で、俺に用事があるのよ」
 もうここを辞めてもと、手を出そうとした瞬間、天の声が私に「そんなことをするとお前が首になるだけでなく、会社も契約を打ち切られメンバー皆が路頭に迷うことになる」という声が舞い降りて来たため寸でのところで堪えたのであった。若い時ならすぐこいつの胸倉掴んでチョ―パン一発、そのまま会社も辞めてしまっただろうが、そこは50歳もとうに過ぎた年齢の大人、その後のことも考えて老練に行動するようにはなっていたのであった。
 そして、上司ではなかった(当たり前か)訳のわからない男は
「お前ほんとうにバカだな」となぜだかちょっと恥ずかしげな表情をして私に捨てゼリフを吐いてトイレを出て行った。
 私はただただ拍子抜けして、何分(どのくらい)その場に立ち尽くしていただろうか。
 男が難癖をつけて私に迫ってきて、そしてトイレでナニ食わぬ顔をして去っていくまでの所要時間40分。この仕事に入ってすぐの出来ごとだった。
 世の中には奇妙奇天烈(キミョウキテレツ)な事があることは、さすがにこれだけ歳をとれば重々承知していたつもりだが、ここまで変な男にあったのは初めてである。
 その後も、10年の清掃アルバイトという、あまり公に口にしづらい仕事を通して、興味深い人間の行動、唖然とする理不尽な行為、悲喜こもごも体験させていただいた。まさに清掃業だからこそ体験できたのだろうというものもある。本書は3Kと言われ、誰もやりたがらない職業に何の因果か入り込んで10年もたってしまった男が体験したノンフィクションノベルであるが、決して業界の闇(そんなのアラへん)を告発するとか、商売妨害をしようなどという文章ではない。
 ただ、人間の厭らしさ、汚らしさ、優しさ、淋しさ、可愛らしさ、美しさ、愛しさその森羅万象を包み隠さず書いた文章だと思っていただければ幸いです。
 ちなみに、このトカゲ男の正体がその後判明した。現在注目の投資家で数十億の資産を持つ男で、ホテルに隣接する高級レジスタンス(家賃月80~200万)に在住している男だった。現在独身そんな資産を持つ男が、会社を廃業して借金まみれの元健康食品会社社長をアゴで振り回してどうするの、時給1,300円だぜ。

 そのことの詳細をグループの責任者・伊藤に伝えると、伊藤は「まあ、そういうこともあるよ」と言った後、「大事(おおごと)にならなくて良かったよ」と笑っているだけだった。
 こんなことが常日頃(しょっちゅう)あってたまるか、と私は心の中で言葉を吐き捨てたのだった。しかし、お客様は神様と言っても、ここまでされても我慢しなければいけないのがサービス業なのか(私は清掃夫なんだけどな)、ただただ?(ふしぎ)に思った出来事だった。(つづく)

 

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