「美しい花はある、花の美しさなどない」
(*小林秀雄)
「宇宙は有限であるが、果てがない」
(*アルベルト・アインシュタイン)
前者は日本の近代批評の確立者、後者は20世紀の天才物理学者。前者は常に理屈ではなく、非知の地点から直截にモノを見ることを言い続ける。私達の世代は国語の試験問題で苦しめられたので、相当嫌らわれ、特に理系の人間や論理実証主義者には、すこぶる評判の悪い思想家である。そして、後者のアインシュタインは、古典物理学の常識的な方程式を覆し、新たな地平の門扉を開いた人で、彼ら理系の人間には神様のような人間。ところが、このアインシュタインの言葉と小林秀雄の言葉の言い回し(レトリック)が大変似ているのに気付いたのである。ひょっとすると両者が対象に接近し、迫る方法は同じだったのではないか、そして、対象に純粋に接近すればするほど、言葉のレトリックは、禅問答のようにコード(意味)を逸脱してゆき、凡人のコードでは解読できなくなる。まさに、彼ら(天才)はポエムを語るようになる。宇宙はポエムでしか語れないのかもしれなる。哲学・文学が詩人の営みであるなら、科学もひょっとしたら詩人の営みなのかもしれない。今後、量子の営みを解明するのには、やはり新たな天才詩人を待たなければならないような気がする。如何だろうか。

*小林秀雄(こばやし・ひでお)
明治35(1902)年4月11日-昭和58(1983)年3月1日、東京生まれ。日本の文芸評論家、編集者、作家、美術・古美術収集鑑定家。日本芸術院会員、文化功労者、文化勲章受章者。日本の近代批評を確立した文芸評論家です。1929年、懸賞論文「様々なる意匠」で鮮烈に文壇デビュー。『ドストエフスキイの生活』『無情といふ事』『本居宣長』などの名著を残し、文学のみならず美術や古典の批評でも後世に多大な影響を与え続けている。

*アルベルト・アインシュタイン
1879年3月14日 – 1955年4月18日は、ドイツ生まれ。理論物理学者。特殊相対性理論、一般相対性理論、相対論的宇宙論、ブラウン運動に関する揺動散逸定理、光量子仮説、アインシュタイン模型、零点エネルギーの導入、半古典型のシュレディンガー方程式、ボース=アインシュタイン凝縮等多数の業績で知られる。それまでの物理学の認識を根本から変え、「20世紀最大の物理学者」とも評される。