言葉の納戸―突き刺さる箴言⑧

どんな人であるかのほうが、何を持っているかよりは、いっそう自分に貢献することは、きわめて明らかであるが、それにもかかわらず人々は教養を求めるよりは、千倍も金持ちになろうとして余念がない。                   

(ショーペンハウアー*)

 好きな哲学者である。
 巷で氾濫している「自己啓発本」(8割は与太話)を読むなら、じっくりと腰を据えてショーペンハウアーの本を読んだ方が、生きるうえどれだけ得をするか(特に自己承認欲求を得るために汲汲している人間は)。この箴言も彼の『幸福論』の一節だが、彼の幸福論は何世紀に渡って書かれた万巻の幸福論の中でも、現代、色褪せず通用する稀有なものである。
 お金がないことが苦しいことは誰でも知っている(中にはお金のないことに苦労したことがない人がいるため一概には言えないが)。お金を多く持ったからと言って幸福なのかということを私達はもうすでに直観で知っているのである。ひょっとするとお金という意識を持たなくなり、夢中になれる何かを見つけ、行為することが一番塩梅の良いことなのかも知れない。
 「人生にとっての最大の不幸はお金のないことと、お金のあることである」(映画「ハゲタカ」より) 貧乏国日本に転落した現在(2025年)、日本人は改めて「幸福」とは何かを考えるべきなのかもしれない。

アルトゥール・ショーペンハウアー(独: Arthur Schopenhauer,1788年2月22日 – 1860年9月21日)

ドイツの哲学者。主著は『意志と表象としての世界』西尾幹二訳(全3巻・鎌田康男解説)中公クラシックス、2004(元版「世界の名著」中央公論社)、『存在と苦悩』(金森誠也編訳、白水社、新装版白水Uブックス)、『孤独と人生』 (金森誠也訳、白水社、新装版1996。白水Uブックス)、『随感録』( 秋山英夫訳、白水社)、『幸福について 人生論』( 橋本文夫訳、新潮文庫)、『知性について-他四篇』( 細谷貞雄訳、岩波書店〈岩波文庫〉)、『自殺について-他四篇』 (斎藤信治訳、岩波文庫)、『読書について-他二篇』 (斎藤忍随訳、岩波文庫)、『ショーペンハウアー哲学の再構築 「充足根拠律の四方向に分岐した根について」(第一版)訳解』( 鎌田康男・齋藤智志・高橋 陽一郎・臼木 悦生 訳著、法政大学出版局)。『負けない方法』 (高橋昌久訳、京緑社、電子版)

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