言葉の納戸―突き刺さる箴言⑫

宇宙とは最終ページのない探偵小説のようだ。

(埴谷雄高*)

死は推理小説のラストのように意外なところからやってくる。

(山田風太郎*)

 宇宙=探偵小説のラスト、死=推理小説のラストのように意外な所からやって来る。故に死は宇宙からのお迎えなのか。宇宙は人間の死を包み込んでいるのか。時空のない無限な<有>との対でない<無>、<無>でもない<無>、<無>などという小癪な観念でない<無><無><無>、こんな言葉さへない絶対<無>、いや絶対<無>など何も無い、何も無いなど無い世界、いや世界など無い、もう人間の観念では限界がある<無>。宇宙=死はそんな処かもしれない。そして、我々人間は皆、フェア(公平)にそちらに行くのである。

*埴谷雄高(はにや ゆたか)
 明治42(1909)年12月19日 – 平成9(1997)年2月19日)、台湾生まれ。日本の政治・思想評論家、小説家。本名は般若 豊(はんにゃ ゆたか)。共産党に入党し、検挙された。カント、ドストエフスキーに影響され、意識と存在をテーマに文学活動が展開される。戦後、「近代文学」創刊に参加。作品に『死霊』(1946年 – 未完)、『虚空』(1960年)他多数。

*山田風太郎(やまだ ふうたろう)
 大正11(1922)年1月4日 -平成13( 2001)年7月28日、兵庫県に生まれる。日本の小説家。本名は山田 誠也(やまだ せいや)。戦後日本を代表する娯楽小説家の一人。東京医科大学(入学時は東京医学専門学校)卒業、医学士号取得。『南総里見八犬伝』や『水滸伝』をはじめとした古典伝奇文学に造詣が深く、それらを咀嚼・再構成して独自の視点を加えた伝奇小説、推理小説、時代小説などジャンルは多岐にわたる。特に奇想天外なアイデアを用いた『魔界転生』や忍法帖シリーズに代表される大衆小説で知られている。山田風太郎傑作選 河出文庫 2020 年- 刊行中

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