言葉の納戸―突き刺さる箴言⑦

真の新しさとは「古くならない」ことである。

(小津安二郎*)

 初めて観た小津安二郎監督作品は「お早よう」であった。小津監督の中では、晩年のもので、カラー(総天然色)、トーキー(発声映画)作品である。小津の中ではそれほど評価が高い作品ではないが、大変興味深く鑑賞した記憶があり、それから立て続けに代表的な小津作品を観たのだと思う。映画は60年代の新興住宅の4人家族(夫婦と子供<兄弟>-自分と重ね合わせていた)の日常が映し出されている。話は何の変哲もないホームコメディなのだが、今まで観ている映画とはどこかが、何かが違うというのが、この鈍い頭でも分かったのである。  
 テンポや間に妙な違和があり、何故、ここからと思わせる斬新なカットに惹きつけられたのだろう。そう私には新しかったのである。その後、小津監督の言葉に触れ、「新しい」ということはどういうものなのかを考えるようになった。そして、最近は、すぐに「古くなって」しまうものの多さに唖然とするはかりなのである。もっと凄いのは、とうとう出現前から「古くなって」いるものが出てきたことである。大阪万博、高輪ゲートウェイ(これは名称も)前、リニアモーターカー(これは計画からかなりの年月だからしゃーないか)、こんなものを企画したプロデューサーのセンスの古さには、唖然を通り越して、呆然とするばかりである。私達は今一度松尾芭蕉の言う「不易流行」という極みを考え直すべきなのである。

小津安二郎(おず・やすじろう)

明治36(1903)年12月12日 – 昭和38(1963)年12月12日、日本の映画監督、脚本家。日本映画を代表する監督、サイレント映画時代から戦後までの約35年にわたるキャリアの中で、原節子主演の『晩春』(1949年)、『麦秋』(1951年)、『東京物語』(1953年)など54本の作品を監督した。ロー・ポジションによる撮影や厳密な構図などが特徴的な「小津調」と呼ばれる独特の映像世界で、親子関係や家族の解体をテーマとする作品を撮り続けたことで知られる。黒澤明や溝口健二と並んで国際的に高く評価され、彼を慕う映画監督(ヴィム・ヴェンダース)、アーティスト(大瀧詠一)も多い。

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