言葉の納戸―突き刺さる箴言⑭

馬鹿が馬鹿を馬鹿だといえば、馬鹿が馬鹿を馬鹿だという。 馬鹿で持ったる我が世なりけり。  

(*斎藤緑雨)

 馬鹿な人は分かるのだが、利口で賢明な人とはどういう人なのか、未だに分からないのである。利口な人がいるならば、この世はもっと良くなっているはずなのに、どんどん悪くなっているようにしか見えないのは何故なのか。利口な人よ、どこかに隠れているのなら、少しくらい顔を出してくれても…。話は変わるが、「頭がいい」と自分で言っている輩で、頭が良いなと思った奴は今まで決していなかった。また自分で「運転が上手い」と言っている輩で、運転が上手い奴は一人もいなかった。これ真理なのである。

*斎藤緑雨(さいとう りょくう)慶應3(1868)年1月24日―明治37(1904)年4月13日、36歳で没。明治時代の小説家、評論家。その痛烈な批評精神と優れたアフォリズム(警句)で知られ、「明治文壇の鬼才」と呼ばれ、その生き方や作品には、冷徹なリアリズムと厭世的な視点が一貫して流れている。また、同時代の作家である樋口一葉と親密な交流があり、彼女の才能を高く評価し、没後には『校訂一葉全集』の刊行をする。著書に『油地獄』『かくれんぼ』他

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