20年ぐらい前になるだろうか、ある高名な学者が「北朝鮮、後5年もたないでしょう」と言い、「ほんとうですか、なかなかシブトイ国だと思いますよ」と私が首を傾げると、「君は北朝鮮(以下北鮮)親派かね。もし潰れなければ、僕は筆を折るよ」と微笑んでいたのを時々思い出すが、その後20年たったが北鮮は三代目に世襲されたが首の皮一枚何とか踏みとどまっている。先生は筆を折らないばかりか、70歳も過ぎたのに毎年4・5冊という驚異のペースでまだ本を出し続けている。先生のシブトイのは結構なことであるが、北鮮のそれは、眺めていて、悲劇を通りこして、喜劇化しているのではないか。最近の金社長は憂いさへ漂わせているようで、気が気でならないのである。
2011年12月彼が北鮮の最高指導者の座を父親の二代目・金正日から継いだ時、彼に対して浮かんだフレーズは<世界一苦しい中小企業の三代目社長・金正恩>だった。それから9年、三代目、中身はともかくよく頑張っている。しかし、ここへ来て無理くりな身体改造(創業社長・「偉大なる首領様」金日成おじいちゃんのような威厳をと、細い体を大きくし、髪型も似せ、およそこの国にファッションの歴史的変化はないのか思わせる格好で、辛そうに歩いているのが痛々しい)とストレスで健康状態が危ぶまれ、死亡説まで流れる始末である。苦しいのだろうなと、いらぬ老婆心が働いてしまうのも否めないのである。きっと、資金繰りが半端じゃないのである。ただそこは社長、様々な策を弄し資金繰りに奔走し(嫌な韓国とも仲良くなり)、やっと大きな金蔓(米国)と接触したが、世の中そんなに甘くはない、簡単にはいかないのである。頼みの綱の中国や闇営業(武器や薬の商い)も新型コロナでそれどころではない。金一族の貯金も底を突き、まったなし、もう万策尽きたような感が否めない。朝5時に身体に振るえがきて目覚めてしまい、寝むれない末期中小企業社長症候群が襲ってきて、一日中気怠い毎日が続いているのではいないかと心配してしまうのである。普通の中小企業ならもうとっくに潰れているだろうし、潰しているのであろう。しかし、金社長の会社はそう簡単に潰せないのである、いや周囲が潰してくれないのである。負債が大きすぎ、簡単に清算はできないのである。清算しても残るものは土地と人間だけある(北鮮の文化など無惨かな、マイナスの価値でしかない――あっ冷麺があった)。土地は米中の二国間のバランス関係の思惑に挟まれ手のほどこしようがないだろうし、人間はどこへ散らばっても過酷な運命が待っていると予想される。
私は三代目金社長が可哀そうでしょうがないのである。世界一悲惨な三代目社長なのではないか。何の因果か偉大なる首領・金日成の孫として生まれてきてしまったばかりに、無理に無理を重ね、万歳されても自分ではバンザイもできず、クーデターが起きたら自分の命さへ危ぶまれ、頼みのグループ会社の大元締には、肝心な時には「独立採算」だと煙たく扱われる始末。倒産したら自分の身を守ってくれるのか、そんな情などない、いや真っ先に「抹殺」されてしまうのが暗―い共産主義グループ会社のやり口で、それこそ金社長自身が一番ご存じのはず。だからなのか、その点は共産主義より明るく、<人権>対してまだましな米国に近づき、万が一には亡命をと、命だけは救って欲しいというのが本音のところなのではないだろうか。もっと情けないのは、倒産されては一番困るお隣韓国で、「悲願の統一」など美しい御託を並べているが、「統一」したならばそれこそ己が立ち行かなくなるために、どうか「潰さないでね」と北鮮にすり寄り、実は<倒産して楽になりたい>金社長に嫌われてしまうという体たらく。令和に元号が変わり、これでもかこれでもかと、様々な問題が起こるが、金社長と過酷な生活を強いられている社員たちをどうにかできないものなのか。 だが、どうにかした後のイメージが誰も浮かばない。ただただ大暴発だけはよしてよと、祈るばかりなのである。何という<難題>を抱えてしまったことか。
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