言葉の納戸―突き刺さる箴言⑱

いいことを照れもせずいう奴はみんな疑ったほうがいいぞ

(*吉本隆明)

 65歳、とうとう老人のカテゴリーに入ってしまった。そして、早く銭湯チケット(台東区は1回100円で入浴できるチケット36回分をいただける―1年更新)を貰わなければと情けないことを考えているジジイなのである。まあ、とにかく、この歳まで生きさせてくれた神に感謝なのだが、最近気になることは、この吉本隆明の言葉である。
 誰も否定できないことを、いけしゃあしゃあと鬼の首を取ったように真顔で言う輩。そういう人間に限って、各論になると逃げてしまう奴がいかに多かったことか。平和、差別反対、戦争反対とシュプレヒコールあげながら、保身にだけは長けていて、器量が小さく、決して自らがリスクを負うことがないところだけを目ざとく見つけ、声をはりあげているあざとい輩たち。綺麗ごとの裏にある薄汚い利権に対して知らないフリをして、自分達が間違っていたのに忘れたかのように振舞っている奴。まあ様々なものを目の前にして、この吉本さんの言葉が一番真(まと)を突いているように思う。先日の野党の総崩れも(2026年2月8日衆議院総選挙)、戦後80年がたち、日本のリベラル(特に社会民主系)というものが、もう見透かされてしまった結果の現れに過ぎない、ただそれだけに尽きるような気がする。
 かつて大日本愛国党の赤尾敏が有楽町で「平和、平和って平和がいいに決まっているだろ」と大声で叫んでいたのを、まざまざと今記憶しているが、赤尾敏がまともに感じてしまう現代社会とは一体どういう社会なのだろうか。あ~立川談志師匠のブラックユーモアが懐かしいのである。

吉本隆明(よしもと たかあき)-大正13(1924)年11月25日 – 平成24(2012)年3月16日、東京生まれ。日本の詩人、思想家。『言語にとって美とはなにかⅠ・Ⅱ』(勁草書房, 1965年)、のち角川文庫、角川ソフィア文庫『共同幻想論』(河出書房新社, 1968年、改訂版・角川文庫 1982年)『心的現象論序説』(北洋社, 1971年)『戦後詩史論』(大和書房, 1978年9月)他多数

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